贅沢な時間に

 平日のおやつ時という贅沢な時間に喫茶店へ入る。店内は意外と混雑していて、年齢層も、これまた意外なことに20代の若者が8割を占めている。その様子からいくと、どうやら試験勉強に取り組んでいるらしい。皆同じような集団に見えて、実は幾つかのグループに分かれている。個人のため、来年度以降も同じグループを保ち、そのグループの一個人となるために集団で取り組む姿は、見ていて何だか微笑ましい。生き物で在る所以が垣間見える。

 そんな中で一人、読書に耽る。自分と周りの集団が、人としての適切なサイクルを形成している。自分としては、このサイクルを行き来するのが心地良い。

 しかし考えてみれば、読書も筆者との対話であり、自分は筆者を喫茶店へデートに誘ったことと同義である。ならば、自分もまた、誰かと連れ添ってこの空間を満喫しているのだと気づく。

 良き本は、良き師匠であり、良き親友だ。利害関係のない仲。そんな幼少期と同じ関係でいられる。会いたくなったら会う。帰りたいときに別れる。それが成立する関係。

 リズミカルに頭を切り替えながら、本との対話を終える。未来予想図を描いて家に帰る。先ずは一つ、描いたものに取り組んでみる。

 日々の充実はミルクレープのように、何層もキレイな層を重ねていくこと。

 層の美しさを求めて、明日も美味しそうな人生を描く。