フルムーンの夜に

 その場に浮遊する余韻というものは、共有の足跡から生まれてくる。人と人、人と場所。物と空間。余韻には独自の時間軸が存在し、過去と未来を急激な引力で現在へと引きつける。

 余韻とは、残すモノと嗅ぎ取るモノの距離である。

 引力が浮遊している空間に触れる。自身が持つ、引力の欠片に触れる。速度にそっと耳を済ませる。感情の速度は引力に追いつけず、自身の弱さをソコに見る。

 背中に余韻を貼り付けて、浮遊空間を拡大させる。未完成な自分を感じながら。

 空白が自己という最小単位の世界に出現する。白い空白を前に、今日もまた、日々の価値ある行動を選び取る。空白を埋めるためではない。突如として現れた、白くて鈍い輪郭の空間に、引力とファンタジーを添えるため。

 二つの満月を手に入れた白猫がベランダに座り、流れる音楽と間接照明を堪能している。