ダイイングメッセージ

 ネズミの死骸を見た。身体は痩せ細り、灰色の毛は荒々しく逆立っている。ネズミ捕りに横たわり、血を吐いた痕跡だけは新鮮さを保っている。

 埋葬はしない。ゴミ袋に入れ、明日になれば他のゴミと一緒に燃やされる。決して美化されることのない死。つぶりかけた目は安らぎでも悲しみでもなく、一生を振り返ったような輝きを帯びている。

 何と戦い、何を守ってきたのだろうか。

 たまたま軽はずみな行動を取り、たまたま簡単に死んだ。そんな生き方も存在する。

 血痕を見る。とても純粋な赤色で、自分の血よりも一切の無駄が省かれているように思う。ピンク色の手足は精巧に作られており、長い尻尾は遊び足りないといった印象。

 ネズミの死骸を見て思う。

 自分とネズミの一生に、どれだけの差異が生じているというのだろうか。

 生きるための行動を取り、死という運命に確実に近づいている。食べて、寝て、動く。その繰り返し。決して変わることのないシステム。

 「偶然の中に必然を見出したい」ネズミの死骸は、自分にそんなメッセージを残していった。ネズミの死骸も、背中で語る言葉を持っている。