鏡の奥に在る世界

 引きこもった気持ちを元の場所に戻すのには労力がいる。元の場所へと戻るまでに湧き上がる葛藤。プライドって言葉が他人事ではないということに気づかされる瞬間。

 環境というのは思ってる以上に柔軟で、問題に対して無関心だ。きっと、他に多くの問題を抱えているのに違いない。それを頭では理解出来ていても、心は反抗を繰り返す。キッカケを窺っているのではなく、ドコまでもロマンに沈み込みたいだけ。

 そんな盲目から覚めた時にふと気づく。「還れる場所、還りたいと思える場所が在る」ということに。

 ソコに気が付くと、還れる場所に戻るまでの道草に温かさを感じる。干渉せず、ただ、両手を広げて待ってくれている場所。環境はあくまで無関心だが、温かさというもう一つの扉も開いてくれている。

 怒りや寂しさ、悲しさや反抗心は、温かさに触れたことがなければ起こらない。不良とはきっと、とても温かいモノに触れたことのある人たちのことを指すのだと思う。

 道に迷ったら想像する。温かさと触れる瞬間を。向かい合う闇の奥に手を伸ばせるかどうか。心は時に耐えがたい。