夜 満月を見上げて

 どんなに些細なことだとしても、何かを作るときはイメージを大切にしたいと思っている。何度もイメージを浮かべることによって、朧気な理想像を生み出そうという試み。

 イメージをしている最中は同時に、葛藤との戦いでもある。理想のイメージ通りにいくためには、そのイメージに沿わせるために、一体何が不足しているのか、生み出されたものを軌道修正するためには、など。

 果たして、自分の理想が他者の求めるものなのか。

 何度も理想を塗り替える。ドコで集中すべきかを考える。失敗の経験を連れて。

 成功は、失敗の化学変化だと思っている。失敗がなければ、化学変化は生じない。失敗の中の異端児が、成功への鍵を握っているはず。その跳躍力に期待を賭ける。

 そう言えるほどの失敗を、今までどれ位積み重ねることが出来たのだろうか。

 外的要因を用いることの出来ない自己との対話。自身にすら取り繕ってしまうようでは、優れた作品など生まれない。

 偽りのない心の中で、初めて気づく作品との距離。イメージの死は、経験の死であり、経験の死は、自己の崩壊だ。

 しかし、そんな循環が、再生への道標ともなる。死と再生。イメージの世界は絶えず二極立を目指して回る。月の満ち欠けのように。

 そのように考えた時、作品とは、多くの自己と語り合わなければならないものなのだと知った。