優しさに含まれるスパイス                 

 人に優しくなれるタイミングとは何だろうか。年を重ねるにつれ、少しずつ優しくなれる部分もあれば、私生活の延長線上に、優しくなれる部分もある。どのタイミングであれ、その時の気持ちに相違はない。

 人への優しさ。偶然が呼ぶ気まぐれな高揚。

 何にも縛られないから優しくなれるワケでもない。縄の存在を意識してこそ、優しい気持ちになれる術がある。

 相手に喜んで欲しいからではない。優しい気持ちを持っている自身に会いたいからこそ、感情と行為が形となって現れる。とても純粋な好奇心だと思う。

 人との関係の中で生まれる純粋なモノ。人との関係の中でしか生まれてこない純粋なモノ。

 何かを予感させてくれるような関係に身を委ねる。回転し始めた感情は、失ってきたモノの多さに気づかせる。損失の中に残る優しさのカケラ。

 失うものがなくなった時に、人は優しさを忘れるのかもしれない。優しさは、過去の自身が生み出すリサイクルだから。